変動リスクの抜本的回避

usagitokame

「さて、話を元に戻すか」。先生は大きく背伸びをして肩を軽くもみほぐした。

「ウサコの質問は、変動金利のローンは本当に借りてはダメかということだったな。結論からいえば、必ずしもダメではない。しかし、ひとたび金利が上昇を始めれば変動金利のローンは目も当てられない状態になる。

それはいま試算してもらったとおりだ。そこでだ、ウサコ。ワシから二つほどお願いがある。」

「なにかしら?」

「一つは、毎月の金利を必ずチェックしてほしいということじゃ。変動金利のローンを選択したら、常に最新の金利動向をチェックし、最適な判断を下し続けること。これを絶対に忘れてはならない。ウサコは毎月の金利を必ずチェックすると約束してくれるかな?」

「チェックだけでしよ? もちろんできるわよ」自信満々に答えた。

「でも、面倒くさいことは全部専門家にまかせたいって、この前言ってたじゃない」ここぞとばかりにカメオが冷やかした。

ウサコは何か言いたげな素振りを見せたが、あきらめて口をつぐんだ。

「金利のチェックを面倒だと感じる者には、変動金利は愚かな選択となる。それはまるで、競争の最中に眠ってはイカンと知りながら、うっかり昼寝をしてしまうのと同じくらい愚かな選択じゃ、ホッホッホ」

「それは言わない約束でしよ」ウサコは顔を真っ赤にして歯がみした。

「もう一つ」先生が人差し指を立てた。「先はども話をしたが、変動金利のローンを選択する際は、(毎月、自由に使えるお金〉の範囲内で金利リスクを取ってほしい。」

「どういうこと?」

「変動金利の住宅ローンは、金利の上昇が続けば、『特約』が付いてはいるものの毎月の返済額がどうしても増えてしまう。この金利上昇による返済額の増額分は、〈毎月、自由に使えるお金〉でフォローしてほしいということじゃ。増額分か〈毎月、自由に使えるお金〉で融通できる金額以下に抑えられないと、家計が一転、赤字に転落してしまうのじゃ。」

説明を聞いてげんなりしたウサコに、先生は追い討ちをかけるように酷な提案をした。

「変動金利のもつリスクを回避したければ、先ほどトータルコストの計算でやってみせた、〈将来の平均金利〉を使って計算しただけでは不十分だ。リスク回避を前提に考えるのなら、最悪のケースとして店頭金利6%まで想定しておいたほうがよかろう。」

「はあ?言うに事欠いて6%ですって?金利6%ってホントにそんなに上がるわけ?アタシに変動金利をあきらめさせようとして、先生はわざとそんなこと言ってません?ここ何年も金利はずっと上がっていないじゃない。」

ウサコはシロフク先生に怒りと疑いの眼差しを向けた。

「たしかにそのとおりじゃ。だが、ほんの20年前、変動金利は8.5%だったのだぞ。」

「それはバブル時代の話でしよ?先生はこの先またバブルみたいな時代がやってくると本気で思ってるの?」

ウサコはいら立ちを隠せない。

「まあ、そうカリカリするな。たしかに、そのときはバブル経済の真っ只中じゃった。ウサコの言うとおり、少なくとも当面はあのような状況が再来するとは考えにくいだろう。ただ、だからといって金利が上がらないという保証もどこにもない。ワシなりに現状を分析して総合的に考えた結果、この先の金利は6%くらいになってもおかしくないと予想したまでだ。」

「その根拠は?」ウサコがねちねちと詰め寄った。

「過去30年間、変動金利の店頭金利の平均値は4.02%で、標準偏差は2.05%という結果だ。そうなると、いわゆる第一標準偏差は1.97~6・07%となり、確率的には68%程度の確からしさで、金利がその範囲内に収まることが予想されるのじゃ。その最大値である6%は十分に可能性が高い数字と考えられる。そもそも、なぜ最悪のケースを想定しておくかというと」

「想定外のことが起こっても、問題が起きないかを確認するためですよね」カメオが先に答えた。

「そのとおり。いずれにしろ、(毎月、自由に使えるお金)が収入の5%以上なければ、家計の将来は安泰とはいえん。もし、住宅ローンの返済額が大きくて(毎月、自由に使えるお金〉が5%を切るようなことになれば、そのときはすでにローン破綻への道を歩き始めていると思ったほうがよい。」

<続く>

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