変動金利ローンの総額を知る

usagitokame

「このように金利だけでなく、手数料など諸費用のすべてを合計して算出する最終的な支払い総額を、読んで字の如く〈トータルコスト〉という。目星をつけた住宅ローンは、必ずトータルコストを測らなければならない。ワシのイメージではトータルコストとは重量計じゃ。見た目は軽そうでも実際に測ってみると重たいローンというのが、実にたくさんあるからな。」

先生は紅茶で喉を軽く潤すと、ウサコとカメオを手招きし、内緒話でもするかのようにささやいた。「よいか、住宅ローンのなかには、当初の金利を異常に安くする代わりに融資手数料を高くしたり、あとから金利か高くなるような設定をしている商品も少なくない。しかし、トータルコストを計算すれば一発で。化けの皮が剥がれる。くれぐれも目先の金利や毎月の返済額だけを比べて判断するような真似だけはせんようにな。」

先生のアドバイスに、ウサコは素直に納得した。だが、一つ気にかかることがあった。

「トータルコストの計算は、金利が何%か分からないとできませんよね。でも、変動金利の場合は将来の金利が分からないわ。その場合はどうすればいいのかしら?」

「ウサコの言うとおり、将来の金利がどうなるかは誰にも分からない。ただ、その場合でもトータルコストを計算する方法はいくつかある。その一つが、過去の金利の平均値を採用する方法じゃ。現在なら変動金利
の平均値は約4%。この数字を当てはめてみるとよかろう。」

「分からない部分は4%で計算すればいいのね」

「基本的にはそうだが、個人的にはあえて4.4%で計算することをお勧めしたいな」

「どうして0.4%上げるわけ?」

「将来起こるであろう金利の変化をコストとして算出するなら、0.4%くらい上げておいたほうがよいと考えられるからじゃ。将来の金利推移をたくさんのパターンから試算すると、〈平均4%のトータルコスト〉と〈全期間4%のトータルコスト〉は乖離する傾向にある。その違いがおよそ0.4%くらいなんじゃ。」

ウサコは話が難しすぎて目が点になった。

「まあよい。とりあえず偏されたと思ってその金融電卓で4.4%で計算してみなさい」

先生はウサコの借入希望額4000万円を例に、ウサコが目星をつけている変動金利の住宅ローンを想定して、その場合のトータルコストを黒板に書いた。

変動金利(適用金利)当初0.775%

11年目以降は4.4%とする。ただし全期間優遇1.625%が適用されるので、適用金利は2.775%(=4.4%-1.625%)

これをもとに試算すると・・・

元利合計 : 5420万7109円

ちなみに、フラット35で同じ金額を借りた場合は、

元利合計 : 5435万4168円

差額は14万7059円となる。

「ねえ、先生。トータルコストは、元利合計以外の諸費用もプラスしないといけないんでしよ?変動金利のローンの場合、諸費用はどれくらいと見積もればいいのかしら?」

金融電卓を手にハヤるウサコを前に、先生は順番に説明した。

諸費用として計算すべきものには、保証料、融資関係手数料、団体信用生命保険料、抵当権設定関係手数料、収入印紙代などがある。

・保証料 : 連帯保証人の代わりに保証会社にローンの保証をしてもらう費用で、保証会社に支払う。
・融資関係手数料 : 金融機関の融資や担保設定に関する手続き費用で、金融機関に支払う。
・団体信用生命保険料 : ローンの借り手が死亡した際、融資分を保険で全額賄うための生命保険料で、生命保険会社に支払う。

金融機関が貸し出す住宅ローン商品は、一般的な条件だと、保証料は2.06%、融資関係手数料は3万1500円、団体信用生命保険料はゼロとして計算すればよい。ちなみに、固定金利のフラット35と比較すると、諸費用の全額が大きく異なるのもこの三つだ。

先生から借りた電卓を弾いて、ウサコはさっそく変動金利のトータルコストを算出した。

「結果はどうじや?」先生が訊いた。

「5506万2609円です。」

「ほほう、変動金利のほうが随分と安く出たな。」

「はい。」

「ウサコが計算しておる間、ワシも計算してみた。もしウサコが変動金利ではなく固定金利のフラット35で借りた場合、トータルコストはどうなるかをな。結果はこのとおり、変動金利のほうが約295万円もお得と出た。」

「いやだあ、やっぱり変動金利を選んで正解だったのね。」ウサコが相好を崩した。

カメオは秘かに焦りを感じたが、努めて冷静を装い精一杯の嫌味を言った。

「ウサコは変動金利のローンと相性がいいようだね。この先10年問金利が上がらなければいいけれど、上がったときはどうするんだか。そういうリスクの大きなローンは、まさにウサコにピッタリだね。」

ふんっ、カメオの面当てをあっさりと受け流し、ウサコは鼻唄交じりに電卓を叩き続けた。

<続く>

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