近未来を目の前に

usagitokame

シロフク先生はカメオの顔に安堵の色を見てとると、今度はウサコのほうに目をやった。

「それで、ウサコのほうは何だ?何か分からないことがあったんじゃないのか」

しつこいようですが、と前置きをしてウサコはゆっくり話し始めた。「アタシが訊きたいのは変動金利のことです。これまで変動金利については、よい点も悪い点もさんざん聞かされてきました。でも、アタシは変動金利のほうが結果的には得をすると思うんです。ローン選びでカメオに勝とうと思ったら、多少博打的な要素も必要でしよ?そこで先生にお訊ねします。

変動金利のローンつて本当に借りちゃダメなのでしょうか?変動金利で借りても失敗しない方法があるのなら、ぜひ教えていただけませんか」

カメオがすかさず口を挟んだ。「たしかクロ兄は、変動金利を選んでいいのは一部の者だけだと言っていたけど」

「そう、兄貴の言うとおりじゃ。〈毎月、自由に使えるお金〉が潤沢であるか、いざというとき現金を用意できる者以外は、変動金利のローンはリスクが大きすぎる。ただ、それは経済環境や家計の状況によっても異なる」

「じゃあ、条件次第では変動金利もアリかしら?」ウサコは祈るような目で先生を見た。

「もちろん。しかしその前に、大前提として覚えておいてほしいことがある。それは、変動金利と固定金利のどちらがよいかは、金利の状況によって相対的に決まるということじゃ。模範解答風に言えば、金利が高い時期は変動金利、低い時期は固定金利がよい、となる」

どうして? ウサコが首をかしげた。

「金利の変動は必ずしもマイナス要素とは限らない。金利が下降している時期に変動金利を選べば将来の金利はさらに下がって得をするだろう。金利が上昇している時期に固定金利を選べば将来の金利に脅かされる心配がなくなる。ただこれには一つ問題がある。いまの金利状況がこの先上昇するか下降するかを、どうやって判断するかだ。これからの金利のベクトルがどちらを向いているか、その判断がたいそう難しいのじゃ」

「でも」カメオが横から口を出した。「金利の高い低いは、過去の金利状況と比べれば分かるのではないでしょうか?」

「それは一理ある。だとするなら〈現在の金利〉は明らかに低い。過去の金利の推移を眺めれば一目瞭然じゃ。だが、これからおまえたちが支払う金利はこれからの金利じゃ。仮に今後も金利が下がっていくようなら、現在の金利はまだ高いことになる」

「でも先生、変動金利の最低値は2・375%で、今は2・475%ですよ。さすがにこれ以上金利が下がるってことはないんじゃないでしょうか?」

「たしかに、そう考える者が多数派じゃ。しかしわずか15年前、ゼロ金利などというものが現実に起ころうとは、ほとんどの者が予想しておらんかった」

「ということは、これからも金利は下がるかもしれないと?」

「それはなんとも言えん。確実に言えることは、何事も決めつけてはならんということだ。ゆえに、われわれに出来ることは、〈金利は上がるかもしれない・下がるかもしれない・横ばいかもしれない〉という、将来のあらゆるケースを想定して変動金利のローン全体を多角的に検討しておくことなのだ。

変動金利のローンを借りて失敗しない方法、その一つは、この将来のあらゆるケースを想定したシミュレートじゃ」そう言うと先生は、かたわらにあったパソコンに向かい、猛烈な勢いで何やら入力を始めた。

<続く>

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